[series] 嚢 -capsule-

揺らぎ、 うごめき、 変化を予感させる"嚢(のう)"
写真:2015年開催「光庭HOKARINIWA2015 伊村俊見・原山健一展」多治見市美濃焼ミュージアム
「土」という素材を扱うなかで、その素材性を活かしたかたちがあると信じてきた。しかし、次第に一つひとつの作品が表す具体的なかたちには、意味はないのではと考えるようになった。

土という素材を使った造形行為には、作り手の意図のほかにも、あらゆる自然の力が作用する。つくられたかたちは、作り手の意図と自然の力が作用する中で生まれた偶然の結果ともいえる。「嚢(のう)」という私の存在する空間とは異なる空間を作り出すことにより、この2つの作用がせめぎ合う境界を観測しようと考えた。

そして、作品に見られる揺らぎやムーブメントは、作り出した異空間がうつろいゆくかたちであることを意味する。それは、安定したいという我々の思いとは別に、日々刻々と変化し流動する自然や社会、我々の存在の儚さに思いをめぐらすことでもある。