やがて、表皮がのび、襞(ひだ)がのび、"延"となる
「土とは何か」「土のかたちとは何か」を考え続けた。具体的なかたちを持たない土という素材に、「あらかじめイメージされたフォルムを具体化すること」に疑問を持っていた私は、ある時、そのようにして土にかたちを当てはめなくても、土との対話の中から、かたちは生まれるのではないかと気づき、はじめからかたち(到達点)を決めないで作ることにしたのである。 ところがいざ取りかかろうとすると、どこからはじめたものか起点が見つからない。そこで、まずある具体的なかたちを作り、そこを起点に土を付けて延ばしていくことにした。しかし、成形は当然のことながら常に重力の支配するところで行うため、簡単にどこからでも土を付けて延ばしていくというわけにはいかない。そこで底になる部分を限定せず、作品をいろいろな方向へ転がしながら三次元的にどこからでも見ることができる物として作ることにしたのである。それによりどの位置からもどこへでも土を付け延ばしていくことが可能となった。 私はこれを「土が延びることで作られるかたち」だと感じた。そして、このようにしてできた作品を「延」と名付けることにした。
下段右写真撮影:柴田 一
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